解説

まず、 N3N\geq 3 の場合を考えます。 この時、球面上で題意の敷き詰めが出来たと仮定し、この時球面上の線分で結ばれている頂点の組について、球面上の線分の代わりに、3次元空間上の一般的な意味での線分で結びなおします。すると、球面上の正多角形は3次元空間内で、通常の意味の正多角形になっています。よって、これを全ての「球面上の正多角形」について行うと、3次元空間内の正多面体が出来ているはずです。 また、逆に正多面体を1つ取ってくると、それに外接する球面上で上記と逆の操作を行えば、題意の敷き詰めを構築出来ます。

注意するべきは、サンプルの説明の最後に触れたように「回転してずれた」場合ですが、この場合でも適切に回転すればずれていない敷き詰めに帰着します。 なぜなら、題意の敷き詰めにおいては、ずれが起きている大円上にある頂点間の間隔は、上側と下側で等しい必要があるからです。 (なお、実は正八面体をもとにした、サンプルに記載の場合以外では、きれいに一つの大円で 22 分割される例がありませんので、このように「回転してずらす」ことが出来ません。)

従って、この問題は N3N\geq 3 に対して、「正 NN 角形で正多面体を作れますか」という問いと同値です。正多面体は、正三角形からなる正四面体、正八面体、正二十面体、正方形からなる立方体、正五角形からなる正十二面体しかないことが知られていますので、 N=3,4,5N=3,4,5 のみYesとなります。 なお、正多面体について上記の事実を知らない場合でも、「正多面体の頂点には、正 NN 角形が 33 つ以上集まる」ことから、正 NN 角形の内角 33 つで 360360 度以上になってしまうとそもそもそのような頂点を形成できないことが分かり、 66 以上の NN に対して全てNoであることは証明できます。 55 以下の NN に対する正多面体の存在は、 N=3,4N=3,4 に対しては手元で実例を形成して確かめることが容易だと思いますが、 N=5N=5 は難しいです。この場合は、 N=5N=5 のみYesかNoを提出して全探索してもよいでしょう。

最後に、 N=2N=2 の場合を考えます。制約からも示唆されるとおり、球面上では「二角形」が存在しえます。例えば、地球上で同一の大円上にない任意の2つの経線を選ぶと、それに囲まれる範囲は「二角形」であり、さらに定義から「正二角形」でもあります。適切な経度の差を選ぶことで、正二角形による敷き詰めも実現できますので、 N=2N=2 の場合もYesが答えとなります。

以上から、 N=2,3,4,5N=2,3,4,5 に対してYes、それ以外に対してNoが答えです。

考察(?)のポイント

①:一旦不必要な情報を捨てて考えてみる

この問題は、発想一発とも言える問題で、解けた方には自明、解けなかった方には不可能に思われていたかもしれません。 このような問題を再現的に解くことは難しいですが(一応球面の幾何などを知っていれば、 N6N\geq 6 の排除は理詰めで出来ますが)、 一つだけ言えるとすれば「球面」という枠を捨て去ることが必要と言えるかもしれません。実は、敷き詰めと言いつつ、 球面上に適切に頂点を配置することさえできれば敷き詰め方を一意に表すことが出来ています(辺は一番近い頂点たちと結ぶしかないため)。 そこで球面を捨て去ってみると、わざわざ球を置いてみるよりは(サンプルで言えば)正八面体を置いてみる方が自然に見える可能性もあります。 このように、状態を決定するために不必要なものを全て捨て去ってみると、エッセンスが見える確率がほんの少しだけ上がるかもしれません。