結論を先に述べると、N=6N=6のとき33N8N \geq 8かつNNが偶数のときN2N-2が答えです。

まず、このゲームは後手から見ると「いかに「同一の局面」を作るか」というゲームになっています。そして、ポーンは一度進むと二度と戻れません。 すなわち、ポーンが動いてしまうと、それ以前に現れた局面は二度と現れることが無くなります。このため、後手の第一の目標は「ポーンが動く余地をなくすこと」となります。

それに対して、先手の最適な戦略は何でしょうか。これは必ずしも自明ではありませんので、次のように考えます。 先手のポーンをkkマス目まで進めるとき、「ポーンが動けなくなる」までの先手の手数をf(k)f(k)、その後ルークを動かす際の実現可能な最長手数をg(k)g(k)とします。 kkの取りうる値は、先手がポーンを最低11回は動かさなければいけないことと、上記の考察より後手は一直線にポーンを前進させることから、3kN23 \leq k \leq \frac{N}{2}に限られます。 題意の答えは、この和の最大値になります。

f(k)f(k)を求めます。先手がkkマス目までポーンを進出させるとき、後手は後手側から見るとNkN-kマス目まで進出させています。 ポーンは最初22マス目にありましたので、先手がk2k-2手、後手がNk2N-k-2手を指しています。ここで、先手はできればポーンが動けなくなる局面を遅らせたいため、 後手の最後のポーン前進を待って先手も最後のポーン前進を行うのがよいです。(それまでは、適当にルークを動かして手待ちをします。また、それ以上待とうとすると後手のポーンをkkマス目で止められません。) この時、先手の最後の着手はNk1N-k-1手目になりますので、f(k)=Nk1f(k)=N-k-1です。例外はk=3k=3のときで、この場合のみ、先手の最後のポーン前進が、最初の11手でもあるため、「手待ち」が使えません。 そのため、単に後手のNk2N-k-2手目をもってポーンが動けなくなります。

g(k)g(k)を求めましょう。この時、重要な事実が一つあります。「ルークが移動しうるマスの数」(すなわち、ポーンの後ろに確保された「自陣のマス数」)を見ると、先手はk1k-1個、後手はNk1N-k-1個となっていますが、 kN2 k \leq \frac{N}{2}より、後手は必ず先手以上のマス数の「自陣」を確保できます。

(この条件は、NNが奇数のとき破れます。その場合、以下の考察が適用されず、後手はより繊細な「最善手」を見つけ出す必要に迫られます。 この最善手の構築が"I hate Bishop (Very Hard)"の主題です。)

議論を簡単にするため、先手の「自陣」、後手の「自陣」のそれぞれのマスに、プレイヤーから見て順に番号が付けられているとします。 すなわち、先手のルークはマス1,2,...,k11,2, ... ,k-1のいずれか、後手のルークはマス1,2,...k1,...,Nk11,2, ... k-1,...,N-k-1のいずれかにいます。 明らかに、先手は自らのルークを「今まで置いたことのないマス」に移動させる限り安全にゲームを続けられます。 後手の主眼は、先手のマスが尽きたとき、すなわち先手がマス11にルークを戻さざるを得ないときに、 次の手でゲームを終わらせられるかどうか、です。そして、これは可能です。後手は単に、先手のルークと同じ番号のマスにルークを移動させ続けることで、 先手が「既に訪れたマス」にルークを戻した瞬間にゲームを終わらせられる状態を保ち続けることが出来ます。 従って、この状態で先手が確保しうる手数g(k)g(k)は、k1k-1となります。

以上より、k4k\geq 4のとき常にf(k)+g(k)=N2f(k)+g(k) = N-2であり、k=3k=3のときf(k)+g(k)=N3f(k)+g(k) = N-3です。 N=6N=6の時のみ、先手はk=3k=3以外を選択する余地がないため、N3=3N-3=3が答えとなり、それ以外の偶数に対しては例えばk=4k=4を選択しうるため、N2N-2が答えとなります。